Lingerie~after story~
掻っ攫うだなんてどこぞのヒーローですか?
どちらかと言えばそういう面倒なヒーロー事から無縁な筈でしょ?九条くんは。
何かのドラマや映画じゃあるまいし、本当にヒーローの如く私を掻っ攫ってくれるとは思わない。
でも、けっしてその場しのぎの偽りを口にする人でもない。
だとしたら、それこそ駆け落ちでもしようと言いだすつもりなのか。
そういう心持ち?
とにかくだ……変なの。
九条くんの叱咤激励はいつだって私の怯んだ心に効果覿面。
恐いと震える半面で安堵を覚えるのだ。
自分も……嘆いてばかりいても仕方ないと。
ほんの少しにも勇気が沸く……。
九条くんが言うなら大丈夫じゃないかと……
「九条くん、」
『ん?』
「……物凄く……好き」
『………それは、反対語に捉えなくていいんだよね?』
「フッ……うん、」
完全にアウトだ。
姉の目前、別れ話をしている筈の会話に自分のふり絞った勇気を音にして響かせる。
でも、だって、これが私の本心だもの。
それを示す様に、言葉を発してすぐに俯いていた顔を持ちあげるとまっすぐに姉の顔を視界に捉えて視線の対峙。
相も変わらず弧を携える姿は凛と強く逞しく美しくもある。
お爺様の自慢と言えるであろう成長し花開いたような姉の姿には素直に賞賛の拍手を送るべきだろう。