Lingerie~after story~
Epilogue
ああ、今日も……、
「お前らの色彩感覚どうなってるんだ?今から良い眼科紹介してやろうか?誰だよこのセンスの無い生地サンプル集めてきたの」
耳に痛く響く我が恋人様の悪態よ。
あれからすでにしばらくだ。
私も九条くんも早急にお家問題に放り込まれるわけでもなく、とりあえず元の生活基盤に徐々にあちらの仕事にも立ち回るような流れとなった。
お互いの関係も今のところ婚約者と言うところだろうか。
かといって、左手の薬指に指輪があるわけでもなく、本当に前の生活に戻ったにすぎないような現状。
平和と言えば平和よね。
それでも、この彼の悪態を目の当たりにすると平和と言っていいのか躊躇う物はある。
デザイン部の入り口前に立つ直前から響いていたそんな怒号に、悩ましく頭を抱えて立ち往生。
それでもこちらだって仕事を抱えての来訪なのだからと、意を決して身を動かしコンコンとガラス戸をノックすると中に入った。
「失礼します」
礼儀的な一言を告げ足を向けたのは九条くんのところ……ではなく、
「あ、ミモリ!こっちこっち~」
「イズミ、この前チェック入ってたロゴのパターンいくつか作ってきたんだけど、」
と、仕事として用事があったのはイズミの方だ。
相も変わらず、私よりも確実に女子力高めにきらめいているこのお方。
私との関係も相も変わらず。
今なんかは作業の為に前髪をクリップで留めていて、私に出来上がったばかりのサンプルの下着を『見て見て』と女子さながらにきゃぴきゃぴして突き出し近づいてくるのだ。