Lingerie~after story~
意味が分からんと眉をひそめた刹那であった、
「フッ……ごめん。嘘」
「……ミモリさん?」
「全然正常だよ九条くん。でも、これはちゃんと九条くんの分だから。デザートもあるの、冷蔵庫にプリン。好きでしょ?」
「好き……だけど。ちょっと待って。なに?……イズミに…なんか聞いてた?」
「イズミ?別に何も話してないけど?」
「じゃあ……何で俺が戻ってくるって分かってこんな夕飯…」
そこまでだ、そこまで言いかけて自分の頭に立った仮説にさすがに少し胸がざわつく。
『まさか』と思えど彼女ならあり得る事じゃないだろうか?
自分としては当たっていて欲しくない予想であるのに、その期待はあっさりと彼女の言葉に崩される。
「何でって……戻ってくるのが分かってたから」
「っ……」
「『いつか』は明確でなくても『戻ってくる』って事は分かってたから。だから、九条くんのご飯作って待ってるのは当たり前の事じゃない?」
「………毎日?………今までの食事は?」
「………まあ、私のお弁当になったり、モラル的には胸が痛む末路になったり」
なんだよそれ。
マジかよ、本当。
さすがにそんな事態までは想定していなかったと思わず片手で頭を抱えて項垂れてしまう。
そんな俺に対する彼女は驚くほど穏やかで平常。
宥める様に微笑むでもなく、後悔を煽るように哀愁を見せるでもない。
憤りなんて更に皆無。