Lingerie~after story~




ああ、今宵もキシリとベッドが揺れる。

私の体に障りの無い様、静かにベッド這うも重みに素直に沈むマットレスの仕業で微々たる振動が逆に意識を覚醒させにくる。

いや、そんな微々たる振動で意識を浮上させるほど無意識に待ち焦がれていたのだろう。

待ち焦がれ、やっとその瞬間だと小さく歓喜すら覚えるのに揺り起こされる意識の覚醒は中途半端で。

与えられる気遣いという優しさが憎らしくなるほど。

そこにいるのに、手を伸ばして触れたいと思うのに。

いや、意地っ張りで素直じゃない私が覚醒時にそれをまともに出来るかは分からないけれど。

とにかく無意識と意識の境目の様な水面すれすれ。

無意識と言う水面下から彼の気配を捕えてもどかしい。

手を動かしたい、彼の熱を感じたい、声を……、

「くじょ……くん……」

なんとか発した声音は夢の中の物であるのだろうか?

自分ではまともに全力で発したつもりであったのに、耳に届く響きのたどたどしく弱々しい事と言ったら。

果たして彼に届いたのかと疑問すら覚える程のか細いモノ。

そもそも、本当に彼が目の前にいるのであろうか?

この気配すらも夢の産物で、もっと言えば彼との関係そのものが……


「フッ………ただいま、ミモリさん」


抱いた懸念をすぐさま払拭しにくる声音は低くも柔らかく……耳が擽ったい。


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