Lingerie~after story~
そう、あの日以来なのだ。
あの日以来まともに家の中で九条くんとの接点がなくなってしまった。
最初の朝は一応顔を合わせ、確かに仕事の追い込みに入るとは言っていたのを覚えている。
私も『そうなんだ』と納得はしていた流れであったけれど、まさかこれほどまでにすれ違う事になるとは思っていなかった。
夜は遅いにしても朝くらいは顔を合わせて食事できるものだと。
なのに…、
「何よ、それって単に仕事が理由ですれ違ってるだけじゃない。帰っては来てるんでしょ?子供じゃないんだからその位我慢しなさいよ」
「分かってるわよ。私だって仕事だって思ってたから我慢してたし応援もしてたわよ」
「じゃあ……何で今そんなモヤモヤしてるのよ」
「………」
「黙ってちゃ相談にも乗れないけど~?」
「っ~~ベッドで……寝てる形跡が無いのよ」
「……はっ?」
「確かに帰って来て、私のところに来てる気配は覚えてるのに……寝てるのは……ソファだと思うの。……毎晩」
確かに私の元へ帰宅を示す様に近づく気配は感じているのだ。
それを待ち焦がれて、気配に気が付き手を伸ばしたい衝動に駆られるのに睡魔に勝てず。
そうしてようやく覚醒した朝にはベッドに求めた姿は不在で、寝ていた様な痕跡もない。
リビングへ向かえばやはり皆無の気配とソファで休息を取ったであろうタオルケットが畳んで置いてあるのだ。