Lingerie~after story~
違和感が確信めいた瞬間に2人の会話などまるで耳に入っておらず、巻きついていたイズミの腕を振りほどくと彼に向かって手を伸ばしていた。
そうして伸びた指先は鬱陶しい前髪をかき分け本来の綺麗な双眸を露わにする。
相変わらず綺麗。
それでも……いつもとは違う。
同時に触れた頬から伝わる熱も。
ああ、確信。
ここ数日の違和感やすれ違いの理由に確信を持ってしまえば自分の眉間に刻まれた不機嫌。
そんな私にらしくなく動揺をチラつかせた彼を見逃してはいない。
それが更に自分の違和感を確信に変えて、
「今日は絶対に定時に帰って来なさい」
「いや、言ったでしょ?今仕事が……」
「九条 爽の力量あれば一日の仕事の遅延くらいどうにか出来る筈でしょ!!」
「っ……」
「それにこれはお願いじゃないの。命令よ。帰ってこなきゃ、もう二度とあの家の敷居は跨がせない」
「………」
「肝心なところで気を許さない猫にこっちも気を許せる筈ないでしょ?」
「…………っ………ミモリさんって……変なところで強気。……ってか……鋭い」
「九条くん、」
「……分かった……降参」
そう脱力したように笑みを見せたかと思うと、倒れ込むように寄りかかって肩に頭を預けてきた彼を支える様に腕をまわす。
ああ、やっぱり……、
私が納得している横ではさすがにイズミも驚愕をみせて覗き込んで「どうしたの!?」なんて声を響かせていて。
どうしたもこうしたもない。
「熱よ。しかも……高熱」
体温計で測るまでもない。
触れただけで分かる。
今度は違和感なんて物で収まらないほど彼が発熱状態である事が。