Lingerie~after story~
いやいやいや、だって待って、
「く、九条くんとつきあう前の事だからね!?怒られるような時系列での記憶じゃないからね!?」
「当たり前でしょ。そんな時系列での記憶とか言ったら今すぐ剥いで強引に突っ込んでる」
「っ……」
何を?とは恐くて聞けないし、言われなくても意味は分かる。
そして彼ならそれを間違いなく実行する人だという事も。
そして本気で不機嫌を示す時の彼のバロメーター。
普段は敬語混じりな癖に感情的な時は途端に口が悪くなる。
そして……今の発言はちょっとばかり卑猥だと思うのよ九条くん。
色々と動揺に満ちている心を出来る限り押し隠して、自分も淹れたてのコーヒーに口をつけると湯気で眼鏡がジワリと曇る。
もうこのまま何も見たくないし聞きたくないなと現実逃避を感じながらコーヒーの苦みを口に広げていると。
「いいよ、」
「………へっ?」
「ミモリさんから誘ったんでしょ?食事。俺今日は特別仕事も詰まってないし、定時あがりで会社エントランスでいい?」
「あっ……あ、うん、うんっ!じゃ…えっと……み、店探して予約しておく!あ、あとあと……食事の前に駅前のシルバーホール行きたいんだけど!」
「ん?何か今催してるの?」
「クラゲ展!ずっと行きたかったんだけど行くチャンスなくて。今日までだったから諦めかけてたんだけど」
「へぇ…クラゲ展とかちょっと面白そう。良いインスピレーションもらえそうだし」
あ、これは良い笑顔。
ふわりと気が抜けたような柔らかな口元の緩みに、先程までの不機嫌が解消された事を感じて安堵と共にジワリと歓喜。