愛人契約
その決心とは裏腹に、泰介の容態は、日に日に悪くなっていった。

もう、待っていられなくて、泰介の学資保険を解約した。

そうは言っても、泰介が高校に入ってからかけた保険だから、そんなにお金も貯まっておらず、それでも手術費には足りない。

高額の医療費がかかった場合は、後で戻ってくるとは言っているけれど、その前に一旦は治療費を払わなきゃいけないし。

もうどうしたらいいか、分からない。

「はぁ……どうにかお金を用意できれば、泰介に強く言えるのに。」

そんな事を、会社の休憩室で呟いていた時だ。


「なあに?そのため息は。」

肩を叩かれ、振り返るとそこには、三宅先輩が立っていた。

「先輩……」

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