愛人契約
その人も立ち上がって、頭を下げた。

「初めまして。矢部篤四郎と言います。」

「矢部さん……」

掛けている眼鏡も、素敵だった。


「どうだろう。立って話すにもなんだから、お茶でも。」

「はい。」

そして私達は、その場にあるソファに座った。

「何を飲みます?」

「じゃあ、紅茶をお願いします。」

矢部さんは、ホテルの人を呼んで、私の分の紅茶を頼んでくれた。


「お洒落な人が来てくれて、よかった。」

「そうですか?」

「ファッション誌の仕事をしているからね。ファッションに疎い人とは、どうも合わなくて。」

私は、少しだけ笑った。

よかった。

どうにか、気に入られたみたいだ。

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