愛人契約
「ちっ!」

矢部さんは立ち上がると、本田さんと向き合った。

「知り合いだかなんだか知らないが、こっちは大事な話をしてるんだ。退くのはそっちだろ。」

「嫌がる人間を、無理に押し倒そうとするのが、大事な話か?」

すると矢部さんは、私の方を向いた。

「……分かった。」

私はハッとして、下を向いた。

「あんた、そんな事を言うって事は、彼女の前の契約の男か?」

本田さんは、ポケットに手を入れて、黙っている。

「ああ、そうか。自分の女が、他の男に取られると思ってんだな。だが、残念だったね。」

私は急に、矢部さんに立たせられた。

「きゃああ。」

「彼女はな、望んで俺のところに来てるんだよ。あんなとはもう、おさらばしてな。」



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