愛人契約
それは、弟の一言から始まった。

「えっ?頭が痛い?」

「うん。吐き気がするくらい痛いんだ。」


朝、まだ学生の弟・泰介がそんな事を言い始めた。

「どうしよう。病院に行く?」

「うーん。でも今の時期、学校を休む訳には、いかないから。」

弟の泰介は、大学受験をする為に、今まで以上に勉強に励んでいる時だった。

「勉強のやりすぎじゃない?」

「全然。これでも足りないくらいだよ。」

「念の為、お姉ちゃんの薬、飲んでおく?」

「うん。」

私は、痛み止めを泰介に渡した。

「ありがとう、姉ちゃん。」

「ううん。今日も勉強、頑張って。」

そう言って、泰介を送り出した。

それが、間違いだった。

< 3 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop