愛人契約
私は夜中、泰介の元へ戻った。

痙攣は治まっていて、腕には点滴の針が刺さっていた。

「泰介。もう我慢しなくてもいいからね。明日、これで手術してもらうように、先生に言うから。」

私はバッグから取り出した、30万円の束を握りしめた。

眠っている泰介から、返事はない。

私は、布団の上にそっと顔を埋めた。


私を押し倒した本田さんは、とても情熱的な目をしていた。

こんな人に抱かれるなんて。

久々に、胸がドキドキした。

なのに、終わった途端のあの冷ややかな態度。

所詮、気持ち良さそうに喘ぐのも、このお金の為だと思ったんだろうか。

そんな事を考えたら、涙が出てきた。


もう、本田さんの事を考えるのはよそう。

どんなに私が好きになったところで、あの人と付き合える事はないのだから。
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