愛人契約
次の日の朝。

主治医の先生に、泰介の手術をお願いした。

「よかったね、泰介君。」

山を一つ乗り越え、しかも手術を受けられる事に、主治医の先生はとても喜んでいた。

「ありがとうございます……先生。」

「じゃあ、日取りは早めに取っておくよ。」

「はい。」

主治医の先生はそう言うと、病室を出て行った。


「本当によかったわ。」

私は泰介のベッドサイドに椅子に座った。

「姉ちゃんも有難う。お金、かき集めてくれて。」

「ううん。弟の為だもの。当たり前じゃない。」

私はバッグの中にある封筒を、ちらっと見た。


泰介は、あんなに手術を拒んでいたのに、昨日の発作で、死が目前にあると分かったのか、今日の朝手術の事を話したら、あっさりと承諾してくれた。
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