愛人契約

泰介がうつ伏せで、倒れていたのだ。

「泰介!泰介!!」

呼びかけてみると、少しだけ意識があった。

「姉ちゃん……頭が痛い……」

その掠れた唸り声が、私にサイレンを鳴らせた。

「泰介、今救急車を呼ぶから!」

バッグからスマートフォンを出し、急いで救急車を呼んだ。


それがやって来たのは、呼んでから15分後の事だった。

「泰介、しっかりして!」

泰介と一緒に病院に行き、精密検査をして貰った。

大した事、ありませんように。

私が祈ると、頭が痛いと言った朝の泰介の姿が思い浮かんだ。

どうして、あの時。

病院に連れていかなかったのだろう。

私は、自分の浅はかさを責めた。

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