愛人契約
「ほ、本田さん。」

「静かに。動かないで。」

そう言って本田さんは、私の足を摩ってくれた。


「すまない。あの人は、前に愛人契約を結んでいた人で……」

「……本人から聞きました。」

「そうだったか。何か言ってたか?」

「……何も。」

そう答えると本田さんは、摩る手を止めた。

「何も言ってなかった相手が、君にこんな事をする訳ないだろう。」

「いえ……」


彼女だけが悪いんじゃない。

私だって、彼女を煽るような事を言った。

お互い様なのだ。


「言ってくれ。彼女が君に何を言ったのか。」

私は、正直に言えなかった。

「言えば、私の醜いところも、曝す事になります。」

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