【バレンタイン特別短編】棚の上の恋
私の手は、先程まで私と格闘していた本を楽々と捕らえている。
そして、私の体はゆっくりと地に足をつけた。
突然の出来事に頭がついていかなくて、後ろを振り返ることすら出来ない。
すると、背後から人が立ち去る気配がした。
(お礼言わなきゃ!!)
そう思って振り返ったものの、そこには既に誰の姿も無い。
ただそこには、さわやかな蜜柑の香りが残るのみで、私は立ち尽くすしかなかった。