血まみれ椿姫
古家こはるだ。


俺のファーストキスを奪った絶世の美女。


そういえば古家先輩は今回の事をどう思っているんだろう。


屋上のタバコ仲間が2人も死んだ。


相当ショックを受けているんじゃないだろうか。


そう思い、気が付けば俺は3年生の教室にお邪魔して古家先輩の前に立っていた。


人の気配に気が付いた古家先輩が文庫本から視線を上げた。


日本の本かと思えば、その文庫のタイトルは英語で書かれていた。


「あら、どうしたの?」


大人びた口調でそう聞いてくる。


どうやら、俺の顔は覚えていてくれたようだ。


「先輩……大丈夫かなと思って」


何と言っていいかわからず、俺は単刀直入にそう聞いていた。


視線は自然と先輩の唇へ向かってしまう。


ふわりとした感触と温もりを瞬時に思い出し、慌てて脳内からかき消した。


「あたしなら大丈夫よ」


文庫本を閉じて、古家先輩はそう答えた。
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