血まみれ椿姫
でも、知らない人だ。


俺のおじいちゃんじゃない。


「これは誰?」


「この人は中田さんと言う人なんだよ。当時はすごくカッコよくて、恋中にあったんだ」


おばあちゃんが椿森に詳しく、いつも会話に出てくる理由は昔の恋人が椿森の伐採に関わっていたからか。


「別れちゃったんだろ?」


「そうなんだよ。この後ろに森が見えているだろう? これは椿森だ。この写真の中に映っているのはみんな椿森の伐採に関わった人たちで、いろんな災難に巻き込まれたんだ」


つらそうに表情を歪めてそういうおばあちゃん。


「災難って、なに?」


俺はその言葉に食いついた。


「他の作業員たちは病気になったり、事故にあって亡くなったりしたんだよ」


「……この人たちだけ、生き残ったってこと?」


「あぁ、そうだよ。どうして自分たちだけが生き残れたのか、本人たちにもわからなかった。


でも、椿森の最後の伐採の日に記念でこの写真を撮ったんだ。私はその時丁度中田さんにお昼を届けに来ていてね、一緒に写真に写ったんだよ」
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