血まみれ椿姫
困ったように立ちつくす看護師さんに、泣き崩れている城の母親。


視線を窓辺へと向かわせると、鉄格子のついた窓をバンバンと叩いている城の姿があった。


「おい、城! なにしてる!」


俺は慌てて城を止めた。


状態は安定していると受付で聞いたばかりなのに、なんだこの状況は。


「昨日までは大人しくしていたのに、さっき突然暴れ出したの……」


そう言ったのは城の母親だった。


自分の息子がこんな状態になり、どうすればいいかもわからずに不安だったのだろう、突然声を上げて泣き始めた。


看護師が母親の背中をさすって落着かせている。


「城、もう大丈夫だ。原因がわかったんだ!」


「良真……」


城のうつろな瞳が俺を捉えた。


「声が……聞こえるんだ」


その言葉に俺は一瞬にして笑顔を失った。


「え……?」


「『椿のように散って死ね』あの声が、頭の中で聞こえてくるんだ……!」
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