血まみれ椿姫
実際、先輩の頭にもあの声が聞こえてきているのだ。


信じたくなくても、信じる以外にないだろう。


俺たちは《椿ホーム》の裏手に回り、森へと続く階段を上って行った。


途中までは固められた細い道があるが、それもすぐになくなり草木に覆われた場所を歩いて行く。


「先輩、大丈夫ですか？」


「大丈夫だよ。でも、こういう場所を歩くなら事前に知らせて欲しかったかな」


先輩はそう言い、体に絡みついてくる草に顔をしかめた。


「ごめんなさい……」


こんな状況なのに思わず謝ってしまう自分が情けない。


森の中はジメジメとしていて、どこから何が出てくるのかわからない。


時々取りが羽ばたいて行く音や、何かが走り去る音が聞こえて来ては、いちいち身を縮めた。


「森の中腹って、このあたりじゃないの？」


10分ほど森の中をさまよい歩いた時、先輩がそう言って立ち止まった。
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