血まみれ椿姫
でも、目緒をこらせば蔦にからまった小さな建物がある事に気が付く。


俺は息を殺すようにしてその祠へと近づいた。


蔦の奥に見える祠は朽ち始めていて、植物の重みで今にも崩れてしまいそうだ。


俺は絡まっている蔦に手を伸ばし、力づくでそれを引きちぎった。


ブチッと音がして、千切れた場所から白い液体が流れ出る。


「城、手伝ってくれ」


「あぁ……」


2人がかりで蔦をちぎり先輩が祠から蔦を引きはがしていく。


無言で作業を続けているとそれは徐々に姿を現し、膝下までの小さな祠が姿を現した。


俺は祠の前に膝をつき、中を確認した。


祠の中には椿の形をした木の置物が入っているだけで、他にはなにもないようだった。


「これが呪いを封印した祠……?」


先輩がけげんそうな表情を浮かべてそう言った。


「祠の中は荒らされた形跡もないし、扉はしっかり閉められてるな」


祠の状態を確認して、そう言う。


てっきり、誰かがこの祠を開けてしまったのだと思っていたが、どうやら違うらしい。
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