血まみれ椿姫
正体
「やめなさい!!」


ギュッと目閉じているとそんな声が聞こえてきて、俺はそっと目を開けた。


目の前に俺たちを庇うようにして立っている人がいる。


よく見慣れた、小さな背中。


少し腰は曲がり、片手に杖を持っている。


「おばあちゃん!」


俺は驚いて声を上げた。


先輩から身を離すと、先輩も目の前の光景に唖然とした表情を浮かべた。


おばあちゃんと女の子が対峙し、ジッとにらみ合っている。


「おばあちゃん……どうして……?」


「さっきの悲鳴、ホームにまで聞こえていたよ」


その言葉に俺は先輩の悲鳴を思い出す。


「それでここまで来たの? 1人で? 危ないじゃないか!」


「若い連中には任せておけないよ。《椿森》の事を何も知らないからね」


そう言い、フンッと鼻を鳴らした。


女の子はチェンソーを持ったまま、ジッとおばあちゃんを睨み付けている。
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