血まみれ椿姫
先輩の後ろにいる青鬼と赤鬼が怖すぎて。


俺はひきつった笑顔で先輩を見た。


「お、俺になにか用事ですか？」


「タバコ、一緒に吸わない？」


小首を傾げてそう聞いてくる。


そうか。


先輩は俺を喫煙の共犯者にするつもりなのだろう。


だけどあいにく俺はタバコを吸わないんだ。


「俺タバコは苦手で……」


しどろもどろに断っていると、先輩の顔がスッと近づいてきた。


俺の影と先輩の影が一瞬重なり、先輩の口を通してタバコの煙が入ってきた。


完全に油断していた俺は煙を吸い込んでしまい、その場で盛大にむせこんでしまった。


口の中にひどい苦味が広がっている。


「あはは。美味しくなかったかぁ」


先輩は楽しそうに笑い、タバコをくわえた。


俺はむせて涙目になりながら先輩を見た。


人のファーストキスを苦いタバコの煙と共に奪ったこの人に、俺は茫然としたのだった。
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