秘密の糸Season1㊦
「あれ、俺いつのまに…。やべ円花にLINEしないと…
梨絵…いたのかよ。」


そう言って雪都は椅子から立ち上がった。


「…ねえ、雪都何か最近疲れてない?」


「そんな事ねえよ、梨絵心配しすぎ」


その時雪都は笑っていたけど、目が笑っていなかった。


無理に笑っていた。


(無理してるじゃない…。)


こんな時でも、雪都はあたしを頼ってくれない…。


すぐ分かる嘘をつく。


それが今あたしは一番辛かった。

「…嘘つかないでよ。」

「梨絵?」

「さっきだって三田倉さんからのLINE送らず寝てたじゃない!!
すぐに送らないのは、LINEするのに疲れてきたからじゃないの!?」

「…勝手に見んなよ。梨絵には関係ないから。」


雪都に言われるたびにどんどん線を引かれている感じがした…。


「…お願いだからあたしにくらい嘘、つかないでよ…!」


お願いだから…あたしの前では強がらないで…。


本音を言い合える。


それが今までのあたし達の関係だったでしょ?


「…だから嘘なんてついてねえよ…。何だよさっきから。」

「…何年一緒にいたと思ってんの!?
あんたの事ぐらい、全部分かるわよ!」

嘘が下手な事…。

好きな人が出来ると見たことない笑顔になること。

好きになりすぎると逆の事をしてしまうこと。

見た目のせいで怖がれがちだけど

本当は誰よりも熱くて

…不器用だけど優しい所

全部知ってる。

だから何年経っても大好き。

そんな雪都が全部大好きなの。

言いたいのに言えない。

喉の奥までは出てるのに言えない。

「…分かったような事ばっか言うなよ!
何で分かんだよ!」

「…だってだって…」

「何?」

今までずっと自分の気持ちを雪都に隠してた。

でも…もう限界。

辛いならもういっそ、あたしの所に来てよ…。

あたしはその時、もう壊れても良いと思った。

壊れて良い覚悟だった。

「…あんたが」

あたしはその時、雪都のネクタイを引っ張った。
< 129 / 146 >

この作品をシェア

pagetop