秘密の糸Season1㊦
そして俺達は、渡されたカードキーで部屋を開けた。

ガチャ


「わあー綺麗。」


「そうだな。」


2人で十分な広さだ。


そして俺達は靴を脱ぎ、部屋に入った。


そして近くにあった座布団に座った。


「ふー…。疲れたな。」


「雪都、運転お疲れ様!」


「ありがとう。」


「部屋綺麗だね!景色も綺麗~!」



そう言って円花は、窓から景色を眺めていた。


俺はそんな円花を後ろから見ていた。



その時、円花が俺の方を振り向いてきた。


「どうした?」


「雪都今日は連れてきてくれて本当にありがとう!」


「どうしたいきなり。」


「雪都はこんなに私の為に色々頑張ってくれていたのに、私いつも雪都に甘えてたよね…。わがままもたくさん言ってた。」


ここ数日、俺達は小さな事で喧嘩をしていた。


ほとんどくだらない喧嘩だ。


それでも最後にはいつも仲直りをしていた。


円花が俺に言ったわがままも、今では本当可愛いくらいだ。


「本当…ごめんなさい。
私、雪都の事、今までちゃんと信じてなかった。」


下らないプライドのせいで


喧嘩ばかりしてた。



「円花…。」

「私、反省したの。私が今雪都の彼女なのに私が信じないでどうするんだろうって。
バカだよね。」

そうやって笑う、円花の笑顔が逆に今の俺には辛く感じた。


違う


今俺は円花を裏切ってる。


「円花俺…。」



あの事を言おうとしたその時、円花が口を開いた。


「私、これからはちゃんと雪都を信じる!雪都の事大好きだから!」


そう言われた瞬間、俺は完全に言うタイミングを逃してしまった。


言ってしまったら、円花は俺を許してくれるのか…。


でも俺は現時点で円花を裏切ったのと一緒だ。


俺は今から円花から全部奪ってしまうのか…。


嫌だそんなの…。


楽しくなるはずの旅行を今崩したくはない。


「ありがとう…。」


そう言って俺はそっとあの事を胸にしまった。


その時、円花が口を開いた。


「雪都、今からどうしようか?」


切り替える為にも


「…とりあえず、浴衣に着替えて外でも回る?なんか色々あるみたいだし。」


俺は咄嗟に近くにあった館内マップを広げた。

「うん!」


そして俺達はクローゼットに入っていた浴衣に着替えた。


「円花着替えた?」


「うん!」


「開けるぞ?」


「良いよ!」

その時の円花の浴衣姿を見て、俺はドキドキした。

「…どうかな?」

(ヤバイ…かわいい)


「…良いじゃん。」


「ほんと?ありがとう!!」


こんな時でも、俺は素直にかわいいと言えない。


「じゃ、行くか。」



「うん!!」


そして俺達は浴衣を着て、外に回った。


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