秘密の糸Season1㊦
そして私は口を開いた。


「…側にいて下さい。」


そう言ってそして井上さんの方を振り向いた。


「私の側にいてください…」


私がそう言った時、井上さんは驚いていた。


この時の私はただ、誰かに甘えたかった。


そこにいたのが井上さんだった。


…私は井上さんを利用したんだ。


優しさを…利用したんだ。


「…いいのか?」


「はい…。もう忘れたい…」


忘れたかった。


あの光景を一刻も早く消したかった。


消して

消して

…描き消したかった。


…抹消したかったんだ。


その時、井上さんが私の頬を触った。


「…三田倉、俺が全部忘れさせてやる。」


井上さんはそう言って、私の涙を指で拭った。


そして井上さんの顔が少しづつ少しづつ近づいてきた。


寸止めになったその時、井上さんが口を開いた。


「…嫌ならやめる、ムリにしたくない。」


「…大丈夫です。忘れらせて下さい…。…っお願い…。」


私の頭の中からあの二人を消してほしい。


そう思った私は、ゆっくりと目を閉じた。


そして…井上さんの唇が少し触れた。



そして私達はキスをした。



触れるか触れないかの優しいキス…。


今の私には甘かった。



でも足りなかった…。



「もっと…してください…。」


そして私は自分から初めてお願いした。


こうでもしないと忘れられない気がしたから…。


そして井上さんは私のお願いを聞いてくれた。
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