秘密の糸Season1㊦

第65話新しい道

【円花】

「んっ…もう朝か。」

目が覚めるとカーテンの隙間から朝日が照らしていた。

起き上がると、横では井上さんがすやすや眠っていた。

（そっか…私、昨日井上さんと…）

昨日、井上さんが来てくれなかったら私はずっとあそこで立ち止まっていたかもしれない。

井上さんの優しい言葉や、

力強く抱きしめられたあの腕の優しさに私は甘えた。

井上さんの匂いや触れられた感触がまだ私の身体には残っていた。


初めて自分からあんなお願いをした…。



男の人の家に泊まるなんて、思ってもいなかった…。


だけど私はその後、罪悪感を感じた…。


忘れたいからって私は…


井上さんを利用した。


自分のエゴを


井上さんに押し付けたんだ。

「…私、本当に最低だ…」

自分のしたことが本当最低すぎて

…悲しくなる。

こんな事したって


虚しくなるだけなのに



「…井上さんごめんなさい…。」


その時


「んっ…もう、朝…？」


井上さんが目を覚ました。