秘密の糸Season1㊦
「何やってんだろう私…。」

自分のせいで皆さんに迷惑かけるなんて…。

本当に情けない…。

私情を仕事に挟むなんて…。

「午後からは頑張らないと…」

持って来たお弁当を広げ、食べていたその時

ガチャ

ドアが開いた。


その時井上さんが袋を持って入ってきた。

「お疲れ」

「お疲れ様です…。」

「隣…良い?」

「あ…はい…。」

そして井上さんは私の横に座った。

「ふー…」

「あの…さっきは本当に申し訳ございませんでした…。」


私は井上さんに頭を下げた。


「良いよ、誰でもミスはあるし。
…けど何かあったのか?」

「え?」

「いつもと様子が明らかに違うから…」


(井上さんには全てお見通しなんだ…。)


私は拳をギュッと握りしめた。

「……すみません。」

「ムリ…、するなよ?」

(井上さん…)

その言葉を聞いてポロポロ涙が零れ落ちた。


「大丈夫か?ほら」

井上さんはそう言って持っていたハンカチを渡してくれた。

「…ありがとうございます。」

「何があった?泣くくらい辛い事あったんだろ?」

この人はどこまで優しいんだろ…。

私は…こんな優しい人を振ったのに


「…俺じゃ頼りにならないか?」

私は首を横に振った。

…そんな訳ない。

むしろ井上さんにはたくさん感謝してる。

「なら泣くくらいなら話せ。
ちゃんと聞くから」

そう言って井上さんは真っ直ぐ私の目を見た。

その目があまりにも綺麗だった。

その目に、私は吸い込まれた。

今だけは…誰かを頼りたい。

今だけで良いから…。

「…はい」

そして私は、井上さんにあのことを話すことを決めた。
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