秘密の糸Season1㊦

「武藤さん！何考えてるんですか！」

やっぱり須藤さんはウチを助けてくれた…。

嬉しかった、本当は。

「零士さんの誘いを引き受けるなんて…
何されるか分からないんですよ！？
雑誌に傷をつけるつもりですか！？」

「……」

でもこの人が見てるのは武藤盟加じゃなくて、

あくまでシスガルの商品

【モデル】としての武藤盟加

ウチはこのシスガルの商品でしか見て貰えない…。

「…んで。」

「え？」

「…なんであなたにそこまで言われないといけないんですか？」

完全に八つ当たりだ。

でも嫌だったんだ。

この人だけは商品としての武藤盟加じゃなくて

一人の人間として

…女としてウチを見てくれている

そう思っていたから

…でも


…違ったんだ。

ウチは掴まれた手首を離した。

「…誰と遊ぼうが私の自由ですよね？
あなたはうちの担当ライターじゃないですし」

ウチはキツイ言葉を放った。

最低だ。

須藤さんはウチの雑誌を盛り上げてくれたのに

それなのに

口が止まらない。

「それは…分かってます！…だけどその…
零士さんには噂があって…」


「…もう良いですか？待たしてるんで」

一刻も早くこの場から離れたかった。

「武藤さん！」

ウチは走った。

「はあ…っはあ…っ…。こんなに走ったの久しぶり…。
はは…。…っ！」

ポタッ…

涙が出た。

これは一体何に対しての涙…?

嫉妬から来る怒りの涙…?

違う…

本気で恋を知ってしまった涙だ。

ウチは本気で須藤さんに恋をしてしまったんだ。

でも須藤さんの目にウチは映ってなかったんだ。

…一度も…

そんなの前々から分かっていたのに

それなのに試すような事をして

勝手に自分を苦しめていた。

須藤さんにとってウチはただの商品の。

…それが答えだ
。
須藤さんは前々からウチとの間に“盾"を作ってんだ。

既に

ブブ

その時スマホのバイブが鳴った。

画面を開くと、零士からだった。

『車用意した。エントランスで待ってる。』

もう期待をするのはやめよう。

ウチはすぐさま返事を返した。

『今、行きます。』

そしてすぐさまバッグにスマホをなおした。