秘密の糸Season1㊦
第70話溢れ出す水
【円花side】

「じゃあな、円花。」


雪都はそう言って、私を家の近くまで送ってくれた。


雪都と帰っている間、私はさっきの事を思い出していた。


気にしない


気にしない


そう頭の中で考えていたのに


いつしか



《負けたくない》


その気持ちが私の中で強くなった。


「………」



その場で立ち止まる私に、雪都は不思議そうにしていた。


「…円花?どうした?」


ふと私は雪都を抱きしめた。



「…円花?」



「…やっぱり今日雪都ん家泊まりたい…ダメ?」


今日の私は可笑しい。


こんな事、自分から言った事ないのに


雪都に会ってから私は、雪都をどんどん求めるようになった。


ぎゅっと強く抱きしめた。


今は

今だけは離れたくない。


離れたらきっと…


私は不安になる。


「良いけど…どうした?」


「一緒にいたいの…ダメ?」


雪都と過ごすうちに、私はだんだん甘えるようになった。


「良いよ、行こ」


そう言って雪都は、ギュッと私を抱きしめてくれた。

「行こ…。今すぐ雪都ん家に」


早く…私をギュッと抱きしめて欲しい…。


そして私達は、雪都ん家に向かった。


< 70 / 146 >

この作品をシェア

pagetop