一番そばに。
帰り道。

大河と一言も会話も交わさないまま家に着いてしまった。

このままだとこれから先が気まずい、そう思って何か話を切り出そうと思うけど、中々何を話せばいいのか分からない。


頭の整理もできないあいだに、



「じゃあ」



大河は短い挨拶をして、家へ入ろうとしていた。



「…待って!」



グイッ…



思わず大河の腕を掴んでしまっていた。


後ろを向いているため、大河の表情は見えない。



「……なに」



少し棘のある、冷たい声。

さっきの甘い声の大河からは考えられないようなくらいの差があった。



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