好きあらば、君だけ

こんなやつなんだけど、魁はすごい。

私より器用で、バイトから社員になった有能な奴。



「 舞、うち上がったら足洗えよ~ ちょっと試したいんだ 」

「 また? いっそ粘土で足形作れば?」



魁は男のくせに、立派なネイリスト。

見ればわかる、魁の手、指、爪……

もはや敵わないパーフェクト。

そして私たちは、互いの家を行き来しても何もない、何も起きない関係。

私の記憶的には添い寝すら… ない。


たまに思う、魁は… 女かもしれないと。

そんなわけはないけど。



私は言われた通り浴室で足を洗う。

でも正直、見せたくない……



「 舞… なんで爪切ってないんだよ!」

「 だって! 忙しいから…… ごめん 」



なんで私が謝るんだか。

私の爪なのに……



「 足 貸せっ 」

「 えっ、ちょっ…… 」

「 血行悪いな、マッサージするからスマホでも触ってろ 」



あー、ムカつく。

爪くらい私が切るって言っても、魁は俺がやるって言うから。

でも、魁はお客さんにも……

魁の手がお客さんに触れてると思うと、ちょっと妬ける。

仕事に妬くって、最悪。


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