1人の女子とゆかいな不良たち
結愛side

「優菜のこと、立ち直りはしたけど俺はまだ乗り越えていないんだ」

優菜さんとの哀しい話をした後、大翔はポツリとそう呟いた

「今でも、あの時、早まってネックレスを渡していなければ。スマホなんか触ってなければ。すぐ駆け寄ってやってれば。って後悔ばかり出てくる」

「大翔...」

「全部今言ったって遅い"たられば"の話だけどな」

そう言って自嘲的に笑う大翔はどこかに消えてしまいそうなほど儚く

胸がぎゅっと苦しくなった

思わず涙があふれてきた

ふとこちらを向いた大翔は私をみて軽く目を見開いた

「なんでお前が泣いてんだよ」

そう言って頬に伝った涙をそっと拭ってくれる

「だって...だって大翔が今にも泣きそうなほど哀しい顔してるから...」

「泣きそうな顔、ね」

意味深な返しに首を傾げる

「俺泣いてないんだよね」

「え?」

「優菜が死んでから今まで1度も」

「えっ」

「泣きたいんだ、ものすごく、泣きたいほど哀しいはずなのに涙は出てこないんだよ」

「大翔...」

「優菜が天国から泣かせないようにしてんのかな、とかバカなこと考えたりするんだよ」

泣かないで笑って欲しい

それが優菜の最期の願いだったから...

そう言った大翔は1度目を閉じ私を見た
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