花と蝶
権家
後宮揀擇を開催するために韓妃は外命婦たちを集めた。外命婦の筆頭は公主、翁主である。
韓妃が呼んだのは安洞行宮に住んでいる貞恵公主だ。貞恵公主は名前を順愛(スンエ)といい、学問が分かり書法に精通していた。
涛城尉に降嫁するはずだったが、彼が婚礼の前に亡くなるという不運に見舞われた。しかし、毅然とそれを受け入れて故人に嫁いだ。それは東瀛では美徳だったし、烈女に値する。
韓妃に呼ばれた貞恵公主は嬉々としていた。久しぶりの宮殿に心が弾んでいるのだろう。
「慈駕、よくお越し下さいました」
「中殿媽媽、おかわりございませんか?」
「ええ」
慈駕とは嫁いだ公主、翁主の敬称である。嫁ぐ前は阿只氏と呼ばれた。
「李尚宮に点心を用意させました」
「光栄ですわ」
2人は腰を下ろした。そこに李尚宮と内人が現れて、点心の乗った盆を用意した。
「慈駕がお好きな蓮の羹ですわ」
「好物が出ると嬉しくなりますわ…揀擇も同じでしょうね。主上殿下の好みにあった女人を選びましょう」
貞恵公主は羹に唇をつけた。
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