花と蝶
久しぶりの宮中の味に満足したのか貞恵公主の表情は一層、明るくなった。
それには韓妃も笑顔を浮かべた。
「実は中殿媽媽にお話したい事があります」
口元を拭きながら貞恵公主は言った。その様子はいささかの不備もなく美しく見えた。
「後宮揀擇で権賢の娘を選びたく存じます」
「権賢と言えば左議政の家柄ですね。申し分ないでしょう」
「家柄だけなら僖嬪より上ですから、牽制になりましょう」
「今は僖嬪の天下ではありません。御前にお仕えしているのは正嬪です」
「あの光城君の夫人だった?まるで武則天のようだとお聞きしました」
「権賢の娘なら主上殿下も無下にはできませんでしょう…」
貞恵公主は声を潜めた。
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