花と蝶
権賢(クォン・ヒョン)は姉が大秦の皇貴妃で、別称を西院公と言った。先王、毅宗も権家には一目置いていた。ただ、突出しないように貞恵公主の姪を権賢の息子に娶らせた。公主を娶った者は高位に就けないからである。
中殿に匹敵する身分を持った権氏が入宮するというウワサは一気に広まった。
口の重い刀自尚宮たちや待令尚宮たちまでも声を潜めて噂を言い合った。
台で正嬪は欣宗と茶を飲んでいた。遠くの山が色づき始めている。
「正嬪、暑い日が続いていたが今は涼しくなった。風邪などひくでないぞ」
「はい、ありがとうございます」
「台でそなたと茶が飲める…それが幸せなのだ」
「言い過ぎです。私めは侍妾に過ぎません」
「侍妾だと?予が愛する嬪御だ、いや、妻だ」
「主上殿下の奥方は中殿媽媽ですよ?」
すると欣宗は白い歯を見せて笑った。きょとんとした正嬪を見て再び欣宗は笑う。
「正嬪、中殿はお飾りの妻だ。本心ではそなたが妻なのだ…そなたは可愛い顔をする」
「お戯れを」
そう言って正嬪は茶を飲んだ。蓮の葉の茶だった。
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