花と蝶
「南越の西湖に咲く蓮を使った茶だ。余はそなたのように可憐な蓮が好きだ。澄み切った香りがする」
「私めは香りのない花でございます」
「香妃(シャンフェイ)や楊貴妃を思い出す」
欣宗は正嬪の頬を撫でた。正嬪ははにかみながら笑った。その仕草が欣宗には可愛くて仕方なかった。
そこに金尚膳が現れた。欣宗と正嬪に一礼をするとこう告げた。
「左議政大監がお越しになられております」
「台の下で待たせておけ 」
「はい」
「あ、あとこの台だが「美人台」と改めよ」
「畏まりました」
金尚膳は深々と頭を下げると台から出て行った。正嬪はすぐに言った。
「左議政大監を待たせてはなりません」
「そなたといたい」
「主上殿下…」
正嬪が困惑した表情を浮かべるも欣宗はその場から動こうとしたなかった。更には宮妓を呼んで伽耶琴を弾かせた。琴の深みのある音に合わせて欣宗は漢詩を読んでみせた。
台の下で待っていた左議政権賢はその場を行ったり来たりしている。
「金尚膳、殿下は正嬪媽媽と?」
「恐れながら…」
「臣より嬪御を優先なさるとは…正嬪媽媽が嬪御になったのが間違えだ」
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