花と蝶
「父親が父親なら娘も娘ですね。もう後宮気取りとは」
「朴尚宮、気にしないことよ。あの娘の言葉なんて痛くも痒くもないわ。刃でもないのだからね」
正嬪と朴尚宮は歩き出した。後苑から帰る途中で内人を引き連れた提調尚宮を見かけた。
「朴尚宮、あれを。提調尚宮だわ」
「左様ですね」
「何かあったのかしら」
「尋ねて参りましょうか?」
「いいわ。後宮にいればいづれ耳に入るからね」
そう言うと正嬪は再び歩き出した。列榮堂に帰ってくると外に控えている2人の内人が頭を下げた。
正嬪は正殿に入ると文台の前に座った。朴尚宮はチョゴリに手を隠して傍に控えた。どうしても彩蓮が頭から離れなかった。色鮮やかな自信に満ちた顔が憎らしく思えてきたのだ。
それを忘れようとしても忘れられないほど印象が強かった。
権彩蓮、父親は西院公、母親は琳州姜氏である。伯母が皇貴妃に冊封されるにあたり、安平郷主の称号を賜った。
そのような娘が後宮として務まるのだろうか。正嬪は彩蓮が後宮以上の位を求めていると考えた。
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