【短】泣き虫先生とわたしの卒業

 彼女のことは知っていた。


 おれの授業、結構頑張ってくれる。残り十五分くらいで寝ちゃうけど。
 おれの授業を一番聞いてくれている、神様みたいな生徒だ!


 それを言ったら同僚に笑われた。普通はみんな起きて、聞いているとか。


 思い出したらまた泣けてきた。ますます駄目人間に思えてきた。



「あの子、クールに見えるけど。あんなふうに笑うんだな」



 てきぱきと仕事をこなしながら、聞かれたことにもすぐに答える。
 美人だからか近寄り難い空気があるけど、笑顔になればそうでもない。


 羨ましいくらい何でも出来る生徒だ。おれとは真逆。本当に羨ましい。


 なんか、ますます泣けてきた。


 とにかく座ろう。ちょっと休んだら、すぐに職員室に戻ろう。



「はぁ……辛い……」

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