【短】泣き虫先生とわたしの卒業
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正直な所、おれは驚きすぎて思考が止まった。いや、寝ていたせいで寝ぼけていたと言った方が正しい。
だから、今のこれも夢なんじゃないかと思っていた。
綺麗な黒髪の生徒が見つめている。よく観察してみれば、それは速水渚。さっきまで図書委員の仕事をしていた彼女だ。
おれは慌てて掴んでいた手を放した。
「ゆうちゃん?」
「ん……すまん」
「大丈夫?」
「え?」
おれはつい叫びたくなった。
「クールビューティーとか言われてる速水が!!」
ビクッと肩を揺らした速水が見えたが、おれは止まらなくなっていた。
「おれを心配してくれた!!」
図書室に響き渡ったおれの声は、なぜか速水の顔を真っ赤にしてしまったらしい。