【短】泣き虫先生とわたしの卒業

 でも、その一方でわたしはこの場所から動けない。動きたくない。


 帰りたくない。
 まだ、卒業したくない。


 図書室から、学校から出てしまえば、ゆうちゃんといつものように話をすることなんて出来なくなる。


 図書室は、わたしにとって特別な空間。
 終わりたくない。



「ありがとうな」



 ふいにゆうちゃんに声をかけられる。わたしの背中に降ってきた声は優しくて、また泣きそうになる。



「渚のおかげで教師を続けられたようなもんだ」

「今じゃ、授業が面白い先生だもんね。よく出来ました!」



 冗談めかして言って振り向くと、ゆうちゃんは照れて頭を掻いていた。

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