【短】泣き虫先生とわたしの卒業
「おれと渚が二人きりで会った場所は?」
「え。えっと……図書室?」
「うん、そうだったね」
いつの間にか後ろにいたゆうちゃん。肩に手を置かれて動けなくなる。
緊張が伝わりそうで、慌ててわたしは振り返る。
「初めて渚を呼び捨てにしたのは?」
「二回目の、図書室」
今思えば、わたしはゆうちゃんのことを出会った日に好きになっていた。
『ゆうちゃん。わたしのこと、渚って呼んで』
『嫌だよ。ていうか、おれは先生だし。そういうの駄目だって』
『じゃあ、もう慰めてやんない』
『渚、今日も話を聞いてくれ』
その時の会話を思い出して笑ってしまう。
何気なく言ったことだった。
ゆうちゃんと特別な関係になりたくて、思いついたのがそんなこと。
意外と自分は単純なんだって気づいてしまった。