【短】泣き虫先生とわたしの卒業


 時刻は午後五時。
 いい加減、図書室の鍵を返さなければ怒られてしまう。
 しかし、彼は帰る気がないらしく泣き続けていた。


 困った。そもそも誰が泣いているんだろう。


 知ったところで、慰めるとか励ますなんて器用なことは出来ない。わたしは、そういうタイプの人間じゃないから。
 面倒なことには関わりたくない。本当に勘弁して欲しい。


 わからないくらい、小さなため息をついてから静かに歩く。本棚から慎重に顔を出して覗いてみた。



「……え」



 今、思考が停止した。それをびっくりしたとも言うんだろうけど。
 本当にびっくりした。


 泣いてるのって、ゆうちゃんだ。

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