蜜月同棲~24時間独占されています~
馬鹿馬鹿しい、とベンチから腰を上げて、その場を去ろうと歩き出した。
けれど、彼は後を追いかけて来て、更に続いた言葉はもっと私を貶めるものだった。


「よく考えたらお前、随分あっさり別れるって言ったよな。もうちょい揉めるかと思ったのに」

「何が言いたいの?」

「お前も、浮気してたんだろ。だからちょうど良いって思ったんだろうが」


……それは。
私が、新田さんと克己くんと、二股をかけていたってこと?


新田さんの言葉があまりに衝撃的で、意味を把握するのに数秒の時間が必要で。
カッと頭に血が上り、彼に向かって平手を繰り出すのが遅くなった。


ひゅっ、と空を切る。
けれど、小気味良い音も手のひらに衝撃も来なかった。


新田さんに手首を掴まれ、防がれてしまったからだ。


「離して!」


心底、殴ってやりたい。
いや寧ろ、一発くらい敢えて受けるくらいの気概はないのだろうか。


自分が私に何をしたのか、忘れてしまったのか。


「いいよな、自分だけ被害者面で挙句逃げ出して。俺はずっと針のムシロだよ、これからも」



酷い言いがかりだ。
私を睨む目も、理不尽だ。


だけど、彼の表情には憔悴している様子も感じられて、酷く疲れているのがわかった。



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