蜜月同棲~24時間独占されています~
「は……?」
と訝しむ声が聞こえる。
私も克己くんの顔を見上げようと身じろぎしたけれど、しっかりと肩を抱かれたままでは思うようにいかなかった。
それでも斜め下から見えたのは、まっすぐに新田さんを見据える目と挑戦的に笑う口元だった。
「おかげで再会できたんだ、感謝するよ。彼女のことは心配はなさらずに」
「は、誰が心配なんか」
「そうですか。ではどうぞお幸せに」
ずっと前を見ていた克己くんが、視線を落とした。
新田さんに向けていたものとは違う、優しく包み込むような穏やかな微笑みに惹き込まれ、目も離せない。
「彼女は俺が守りますよ」
じっと見つめられながらそんな言葉を言われ、涙が滲んだ。
なんで、そんなこと言うの。
もしかして、と勘違いをしてしまいそうになる。
潤む視界に、克己くんの顔が近づく。
額に優しく口づけられて、彼はもう新田さんのことなど気にも留めていなかった。
「行こう、柚香」
抱きかかえられたまま、歩き始める。
興奮して全く気付いていなかったけど、僅かに離れた場所に克己くんの車が止まっていた。
支えられながら一歩一歩、歩く。
歩きながら、私は気付いてしまった自分の気持ちに混乱しはじめていた。
嬉しかった。
守ります、と言ってくれたことが嬉しかった。
それが幼馴染としての言葉だと思うと、胸が苦しい。
苦しいくらいに、克己くんが好きだ。