蜜月同棲~24時間独占されています~
「柚香にひとつ、提案がある」
ビールのグラスをローテーブルに置いて、彼が話を切り出した。
「仕事が見つかるまでの間、うちでバイトしないか?」
「えっ?」
私はグラスを手にしたまま、さすがに今日は少し飲み過ぎたのか酔いが回り始めていた。
インターバルを置いたからまだ飲めるかと思ったけれど、ビールが追い打ちをかけたらしい。
それでもまだ酩酊というほどでもなく、克己くんの言葉くらい把握できる。
「克己くんの会社で、ってこと?」
「そう。勿論、時間も短めでいい。就職活動の時間も取りたいだろうし、面接が入った時はそっち優先で構わない。ちょっとは収入源があった方がいいだろ」
「うん……でも、退職金も入るから、しばらくは大丈夫だけど」
「それは自分のために大事にとっとけ。今まであの会社で頑張った成果だ」
頭がふわふわとしている私と違い、克己くんはまったく問題ないらしく、グラスにビールを注ぎ足している。
私はグラスは殆ど空けられないまま、手の中で温くなっていくビールを見ながら言った。
「確かに……家事だけなら、時間に余裕はあるけど……デザイン会社でしょ? 私にできることあるかな」
「ネット販売部に居たんだろ。ウェブデザインやウェブ広告が中心だし、頼みたいことは雑用でもいろいろある。柚香がそれを引き受けてくれたら、他の社員が仕事に集中もできる」
「そっか……」
「すぐにとは言わない。しばらくはゆっくり休むのもいい。けど、その後は、手伝ってもらえたら俺も助かる」