蜜月同棲~24時間独占されています~
想い人
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克己くんの会社は、オフィスビルの上階の一角に事務所を構えていた。
従業員は十人ほどで、男女ともに若い人ばかりだった。
パソコンが並ぶワンフロアの奥に、presidentと書かれたドアと、他にミーティングルームがふたつ並んでいる。
「柚香ちゃん、今送ったファイル整理しといてー」
「はあい。あ、ちょっと待ってください先にこっち済ますので!」
「いーよー」
パソコンの前でダカダカダカ、とキーボードを打つ。
克己くんの会社でバイトをするようになって、ちょっとキータッチは早くなった。
だって、入力だとかチェックだとかすることが殆どで、あと取引先へのメールだとか多少のテンプレはあったとしてとにかく量が多い。
今の、ちょっと間延びした声の女性は磯原さんといって克己くんと同い年だそうだが、声と違って仕事は早いし動きもテキパキ。デキるウェブデザイナーさんだ。
私は基本、磯原さんに仕事を教わっている。
後は、他の人の雑用を引き受けたりお茶を入れたり。
働き始めて二週間くらいだろうか。
まだできることが少なくて、一生懸命探すのだけれど、本当に誰でもできる雑用ばかりだ。
せめてそれで、他の人の仕事が早く回れば、と思いながらやっている。