蜜月同棲~24時間独占されています~
「すみません。これも私の仕事なのに」
「別に自分のコーヒーくらい自分で運べる」
克己くんがひょいっと肩を竦めて、コーヒーをブラックのままひとくちすする。
それから、はあっと疲れた溜息をついた。
「あー、さっさとやるか。帰んの遅くなんのも嫌だしな」
「そうしろ。俺もごめんだ」
さっさと行け、と克己くんを追い立てるようにして、深見さんも給湯室を出て行く。
急に広く感じたのは、狭い給湯室に高身長の男の人がふたりもいて圧迫感があったからだろう。
見送ってすぐ、ひょいっと深見さんだけがもう一度顔を出した。
「さっきのお誘いは純粋にうちのスタッフの希望ですので、一度真剣に考えていただければ助かります」
「え」
言うだけ言って、深見さんは素早く消えていった。
すごくありがたい話なのだが、本当に甘えてしまっていいのだろうか。
克己くんへの気持ちを自覚してしまっている今、そうすれば傍にいられるとも思うけれど、面倒はかけたくないともやはり思う。
それにここにいる限り、克己くんの妹ポジションから抜けられないような気もした。