蜜月同棲~24時間独占されています~
三つの着信履歴のうち、最初のひとつは不在着信だったけど二回目と三回目はちゃんと通話をしていたようだ。だけどさっぱり思い出せない。
確か、最初の着信が鳴っていた時はまだ店の中に居たような気がするのだ。さやかが私に電話が鳴ってると教えてくれたような覚えがある。
さやかに聞けば何かわかるだろうかと、とにかく出勤することにした。
「あちゃー。全然覚えてないの?」
始業前の僅かな時間、隣のデスクのさやかと話しながら仕事の準備をしている。昨夜の記憶がないことを正直に言った。
「かもねえ、あんた完全にぐでんぐでんだったから。どこまで覚えてんの?」
「電話が鳴ったような覚えがなんとなく。履歴見て電話に出たらしいってことはわかるんだけど、そこらへんはぜんっぜん記憶にない」
「は? そこから? だったら『克己くん』が店まで迎えに来てくれたことは?」
さやかが素っ頓狂な声を上げ、一瞬周囲の視線が集まる。その中に新田さんの視線もあったので何かきまずく感じたが、それよりも驚くべきことを聞かされて私はさやかの言葉に釘付けだった。
「克己くんに会ったの?」
「会った」
そうして、にやっとさやかの口元が歪む。
「幼馴染なんでしょ? 後で話聞かせなさいよ」
どういうことだ。昨日の話を聞きたいのは私の方なのだけど、残念ながらそこで始業時間となり、話は昼休みに持ち込まれた。