蜜月同棲~24時間独占されています~
気になる人。
それがよもや、自分のことだとは思わなくて、しかも彼の口から聞けたのは私への気持ちの移り変わりだった。
「一緒に住んじまったらもうだめだな。手放せなくなった」
腰を掴んでいた手が片方離れて、私のサイドの髪を撫でて梳き、耳に掛ける。
何度かされたこの仕草が、克己くんは好きなようだ。
私も、指が髪の中を擽る感覚が心地よくて、つい目を細めてしまう。
「ゆずも気にしてくれてたんだ?」
「え?」
「俺の気になる人が、誰なのか」
嬉しそうに笑う克己くんに、一瞬、言葉に詰まったけれど。
一歩ずつ。一歩ずつ……私は近づこうと決めた。
「……気になるよ。当たり前でしょ」
「じゃあ、これで安心した?」
返事の代わりに、そろ、と克己くんの肩に手を乗せる。
私のその手に気が付いて、彼も黙った。
「目、瞑って」
どく、どく、どく、と心臓がうるさい。
克己くんが目を閉じて、きっと私が頬か額にキスをする、と思っているだろう。